本研究では、脆弱な液滴やエマルションを安定的に分散させて反応や透析を行うための装置を開発することを目的としている。流れ場としては、低剪断で分散させるため層流状態の回転流場を採用し、テイラー渦流型装置とタービン翼を用いた撹拌槽型装置で研究を行った。まず、テイラー渦流型装置では、原料を連続的に供給し、反応液または、透析後の液を連続的に排出する連続操作を想定して、可視化、液滴分散、固体粒子分散実験を行った。その結果、内円筒の回転数を増加させると遠心力の効果が増大し、テイラー渦セルの回転が強くなることで、この渦セルの軸方向の移動速度が減少することが可視化実験によりわかった。この軸方向の移動速度が遅くなるにつれ、渦間に存在するバイパス流れにより特定の粒子・液滴は反応装置から迅速に排出され、これに対し、渦内に捕捉されたものは長時間反応装置に留まるという特異的な滞留時間分布を有することがわかった。また、内円筒への衝突粒子は比較的少ないこともわかった。つぎに、タービン翼を用いた撹拌装置では、回分操作による液滴・粒子分散性に着目して実験を行った。層流混合場では、タービン翼上下に形成されるドーナツ状の孤立混合領域とその外縁部に存在する混合促進領域の明確な二つの領域に分かれることがわかった。孤立混合領域に存在する粒子・液滴は一定の閉軌道を周回するが、これに対し混合促進領域に存在する粒子・液滴は領域全体をカオス的に巡回することがわかった。また、孤立混合領域は単純なトーラス構造ではなく、複雑なフラクタル構造を有し、粒子・液滴の軌道も様々な閉軌道よりなっていることがわかった。
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