研究概要 |
本研究では、ポリアスパラギン酸系の生分解性を有する反応性界面活性剤を創製し、そのコロイド特性を解明、高分子微粒子調製における表面制御技術を構築することを目的とした。 平成14年度は、モノマーユニットに2重結合を有し主鎖がポリアスパラギン酸からなる新規なビニルマクロマー(VBA-PAsp)の合成に成功した。DL-アスパラギン酸の閉環重合から得られるポリコハク酸イミドにp-ビニルベンジルアミンを導入し、その後、残余イミド環を開環することによって合成した。合成したVBA-PAspを反応性分散剤とするスチレンの分散共重合を行い、高分子ナノ粒子の調製と試みた結果、直径200〜400nm程度の高分子ナノ粒子の調製に成功した。調製した高分子ナノ粒子のζ電位は、-40mVと大きく負の電荷を帯びていた。この結果は、粒子表面に存在するVBA-PAsp分子中のカルボキシル基の影響が顕著に表れたと推察される。 平球15年度は、ナノ領域での粒径制御を目的に、VBA-PAspを用いたスチレン(St)との乳化共重合について検討した。高分子ナノ粒子の粒径に与えるVBA-PAsp濃度の影響を検討した結果、VBA-PAsp濃度の増加と共に粒径は減少した。また、側鎖導入率の影響は20%側鎖導入VBA-PAsp以上で顕著に現れ、側鎖導入率の増加に伴い粒径の減少が確認された。これは疎水性のグラフト側鎖の増加により分子内会合体の形成が促進されたためと考えられる。一方、VBA-PAsp主鎖長の粒径への影響を検討した結果、主鎖長が短くなるほど粒径は減少した,これはVBA-PAspの主鎖長が小さい程、重合場となる分子内会合体が小型化したためであると思われる。以上の結果から、VBA-PAspを乳化剤とする乳化共重合において35nm〜150nmの粒径制御が可能であることが分かった。また、分子内会合体を形成するVBA-PAspの単独重合法では、10nm〜30nmの高分子ナノ粒子の形成が示唆された。 上記成果を纏めると、10nm〜400nmの粒径範囲で反応性乳化剤であるPolymeric surfmer(VBA-PAsp)を用いた超機能性高分子ナノ粒子の合成および粒径制御に成功した。
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