研究概要 |
中空糸多孔膜の内側(原料ガス側,高圧側)に着目ガスと選択的,可逆的に反応するキャリア溶液を原料ガスとともに連続的に供給し,ガスを吸収した液を透過側(低圧側,シェル側)に透過させる方式の新規なガス分離用促進輸送膜を提案し,これを模擬燃焼排ガスからのCO_2の分離およびエチレン/エタンの分離に適用し,以下の結果を得た. 1.純水を吸収液,原料ガスをCO_2/N_2混合ガスとして用い,原料ガスと水を大気圧で限外濾過中空糸膜モジュール(中空糸膜内径:0.8mm)の膜内側に供給し透過側を減圧に保った実験,および原料側を加圧(最大5気圧)に,透過側を大気圧に保つ実験を行った.実測されたCO_2の透過速度は,原料側,透過側ともに気液溶解平衡が成立していると仮定して計算した値の80%以上であり,本モジュールの効率は極めて高いことが確認された. 2.アミンをキャリアとする模擬燃焼排ガス中のCO_2(1.5〜15モル%CO_2)の分離実験では,CO_2は98.5〜99.8%まで濃縮され,ガスの平均対流時間が0.28sと短くても約80%のCO_2が回収・濃縮された.また,CO_2回収エネルギーは,既往のガス吸収法は高分子膜法や高分子膜法と比較して著しく小さく,本方法は極めて省エネルギー的なCO_2回収法であることが判明した,また,熱誘起相分離法により自作した内径が大きい中空糸限外濾過膜(内径1.2mm)を用いることにより,更なる省エネルギー化が達成できた. 3.硝酸銀をエチレンのキャリアとする80%エチレン/20%エタンの分離実験を,原料側を加圧に(<500kPa),透過側を大気圧に保って行い,エチレンを99.8%の純度で回収することができた. 4.膜モジュールは数ヶ月にわたる断続的な実験において安定であり,透過性,選択性の減少は認められなかった.
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