シリカ担持モリブド珪酸(SMA)触媒は、水蒸気過剰雰囲気下でメタンの部分酸化に優れた触媒活性を発現する。雰囲気中に存在する過剰水蒸気の役割は、次式の逆反応にしたがい、SMAの熱分解で生成した酸化モリブデン(MoO_3)とシリカ(SiO_2)から、SMAそのものを再生することにある。(H_4SiMo_<12>O_<40>=SiO_2+12MoO_3+2H_2O)。このようにSMAはメタンの部分酸化を促進する触媒活性種であるが、高温では分解と再生の微妙なバランスの上に存在するため、触媒活性の再現性を確保することは容易でない。本研究では再現性を確保するため、水蒸気供給の脈流効果について検討した。 (1)水蒸気供給の脈流効果 本反応はSMA上のプロトンでメタンを活性化することから開始されると考えているが、多量の水蒸気を定常的に供給するとSMA上のプロトンが水蒸気で被覆されるため、触媒活性が低減する可能性もある。そこで水蒸気をON/OFFパルスとして供給し、触媒活性に及ぼす効果を観測した。その結果、水蒸気を「60秒ON/15秒OFF」のパルスで供給したときに触媒活性が最大(〜25%)となることを見出した。しかし、ホルムアルデヒドへの選択性は低く、生成物の70%以上はCOであった。COはホルムアルデヒドの分解によって生成することが知られているので、その分解を抑制する技術の開発が必要である。ホルムアルデヒドの分解が触媒上で進行しているのか、それとも気相で進行しているのか、現在、この点について解明を急いでいる。 (2)反応中におけるモリブデンの損失 水蒸気雰囲気下では酸化モリブデンは500〜600℃で昇華する。従って、反応中ではほとんどの酸化モリブデンは損失するはずであるが、昇華するよりも速くシリカと反応すればSMAが再生できる。触媒活性の再現生確保のキーはここにある。高活性を示す触媒では350時間の反応後においても損失量は40%強であるが、低活性触媒では短時間の反応においても60%以上のモリブデンが損失する。モリブデンの損失を抑制する触媒調製技術について、シリカ担体の細孔構造を含めて検討する必要がある。
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