研究概要 |
1.新規蛋白質間相互作用測定系split Fv (spFv)システムを用いた抗体VH/VL相互作用の強弱を決定する残基の同定 抗体の可変領域を構成する二つのドメイン(H鎖可変領域VHおよびL鎖可変領域VL)間の相互作用が抗原添加の有無により変化することを利用すれば,小分子抗原濃度を非競合的に高感度に測定できる(オープンサンドイッチ法,OS法)。昨年度構築した,線維状ファージに二種類の蛋白質の片方のみを提示し,片方を分泌型蛋白質として産生させ両者の間の相互作用を測定することができる新規蛋白質間相互作用測定系split Fv (spFv)システムを用いてコンビナトリアルライブラリを作製し,これまで不明であった抗原結合能とVH/VL相互作用の強弱との関係を明らかにすることができた。またVH/VL間の相互作用を決定づけるフレームワーク残基の同定に成功した。 2.オープンサンドイッチ法による溶液中でのチロシンリン酸化の検出 上記の情報をもとに,必ずしもオープンサンドイッチ法に適していない抗リン酸化チロシン抗体PY20の可変領域をこれに適した性質に改変し,溶液中のホスホチロシン濃度およびリン酸化チロシン含有ペプチドを蛍光共鳴エネルギー移動量の変化として検出することに成功した。チロシンキナーゼの高効率スクリーニング法としての応用が期待できる。 3.SpFvシステムによる,小分子の非競合的免疫測定 上記spFvシステムを利用し,既存の抗小分子抗体3種のOS法への適性を判定した。この結果,11-デオキシコルチゾール(11DC),植物ホルモン(ジベレリン A24)およびカビ毒の一種について,OS法での濃度測定が可能であった。11DCおよびカビ毒の検出感度と測定濃度範囲を競合法のそれと比較したところ,数倍の検出感度と100倍近い測定濃度範囲が得られることが判明し,競合法に比べたOS法の優位性が確かめられた。
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