タンパク質は一般に、高次構造を形成して機能を発現する。しかし、タンパク質はしばしば不安定であり、内部疎水性領域が露出して凝集し、活性を失う。タンパク質の凝集を防ぎ、活性を持った構造に巻き戻すための様々な研究がなされている。 これまでにアルギニンを添加する方法は、変性構造から天然構造への回収率が高く、適用できるタンパク質も多いため、有効な方法として利用されている。 我々は、近年、ポリアミンがニワトリ卵白リゾチームの熱による不可逆な凝集に対して、アルギニンよりも高い抑制効果を示すことを報告した。さらに、シクロヘキサンやp-フェニレンジアミンなど、加熱凝集を抑制する化合物が線維化の抑制効果を示すこと、また、、β2ミクログロブリン変異体の線維化の実験では、スペルミンおよびm-キシリレンジアミン、p-ジアミノシクロヘキサン、カフェインが高い効果を示した。これらの分子構造を図2に示す。スペルミンは加熱凝集抑制に効果を示すと同時に、α-シヌクレインの線維伸長を促進することが報告されている。アミノ基の配位による非共有電子の偏りと、疎水性の強さによって抑制効果が決まるのではないかと考えた。 また、一時的に高温環境下に変性蛋白質をさらすことで、リフォールディングを促進させることに成功し、特許を取得した。 主な成果を列挙すると、平成14年、アミノ酸エステル類の凝集抑制効果、平成15年、多くの蛋白質を同一条件でアミロイド化、平成16年、アミロイド形成抑制に必要な化学構造の抽出と、高温リフォールディング法の開発が挙げられる。原著論文16報、学会発表70件以上。
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