研究概要 |
【合成】レニウム(1)二核錯体[{Re(bpy)(CO)_3}_2(dppa)](dppa=bis(diphenylphosphino)acetylene)を有機溶媒に溶解させ光照射することにより、CO配位子が溶媒分子に置換した溶媒錯体を合成し、そこにdppaや[{Re(bpy)(CO)_3(OTf)}(OTf=CF_3SO_3)を加え加熱することにより直鎖状レニウム三,四,六核錯体を合成した。この合成された四核錯体の光配位子交換反応を用い、同様な方法でさらに多核化した八核錯体の合成に成功した。リング状四核錯体は、同様の光配位子交換反応を用いて合成した二核溶媒錯体[{Re(bpy)(CO)_2(MeCN)}_2(dppe)]^<2+>(dppe=bis(diphenylphosphino)ethane)と、当量のdppeを含むアセトン溶液を加熱還流することにより約25%の収率で得た。更に、fac-Re(bpy)(CO)_3(CTf)と当量のdppaをo-DCB中で数日間還流することによりスクエアー型四核錯体を高収率で合成した。それぞれの構造は、^1H-NMR、元素分析、ESI-MS、FT-IR等を用いて同定した。 【光触媒特性】1,2-ビスジフェニルフォスフィノエタン(dppe)を架橋配位子として持つレニウム4核錯体がCO_2還元の光触媒として優れた特性を示すことを見出した。本年度は、この多核錯体の光触媒特性について、反応機構も含めて詳細に検討した。この4核錯体が、CO_2をCOへと選択的に還元する量子収率は、光照射初期において0.15となり、その後0.084で一定となった。この光反応における錯体の変化を追跡した結果、1が反応の初期に、3核錯体と単核溶媒錯体に解裂し、さらに2が比較的ゆっくりと2核錯体と単核錯体へと解裂していくことがわかった。しかし1段階目の解裂反応に対して、2段階目の反応は見かけ上非常に遅く、自己修復反応が起こっていることが示唆された。 【光機能性】ジイミン配位子と架橋配位子を適切に組み合わせることにより、分子内でエネルギー移動、電荷移動、更にそれらを順次的に起こすレニウム多核錯体、すなわち、(1)どのクロモファーを励起しても効率よく左端部から右端部へエネルギー移動が起こる錯体、(2)まず左端部も中央部へのエネルギー移動が起こり、次に中央部から右端部への電子移動が起こるの合成に成功した。
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