非線形化学現象による自発的ナノ構造形成の新しい方法の開拓と確立を目的に、単結晶Si(111)を使用したステップ構造の制御、水素終端結合のハロゲン化、配列ヨウ素ナノワイアの形成、配列ニッケルナノワイアの形成について研究を行い、また電析反応と電気化学振動とのカップリングによる樹枝状結晶形成の機構解明と構造制御について研究を行った。まず微傾斜の水素終端化単結晶Si(111)面上にスクラッチング法により配列ナノワイアを形成し、これをフッ化アンモニウム中でエッチングすると、きれいに配列した周期的なステップ-テラス構造が形成されることを見出し、この形成機構を明らかにした。次に微傾斜・水素終端化Si(111)面をハロゲン化水素酸に浸すと、水素終端結合のハロゲン化(Si-ハロゲン終端結合の形成)が進行することを明らかにし、さらにこの反応がダイハイドライドステップを端緒として進行すること、ハロゲン化水素酸の種類により反応の進行過程が異なることを明らかにした。また水素終端化Si(111)面を5℃の7.1Mヨウ化水素酸に浸すと、三方向に配向したナノワイアが形成し、高分解能XPSの測定によりこのナノワイアがSiのヨウ素化物からなっており、Si表面のエッチングで生じた生成物である可能性が高いことを明らかにした。ただし配向ナノワイアの形成の機構はまだ明らかになっていない。電析反応と電気化学振動とのカップリングを利用した樹枝状析出物の機構解明と構造制御についても研究を進め、ZnやSnの電析における樹枝状結晶の成長がMullins-Sekerka不安定性に基づく自己触媒的結晶成長によるものであることを明らかにし、これと結晶成長の異方性や結晶表面の電位による不動態化とがカップルして振動が生じていることを明らかにした。
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