研究概要 |
光通信において新たな波長帯域の開拓が期待されていることに伴い、C, Lバンドと同様に低損失であるS^+およびSバンド(1460〜1530nm)に注目が集まっており、この帯域の信号光を増幅する増幅器の一つとして、Tm^<3+>添加光ファイバ増幅器(TDFA)が提案されている。しかし、既に確立したEDFAの成熟度と比較すると、未だ決定的な励起方法が確立されていないのが現状である。そこで本研究では、TDFAの高性能化を目指して、Tmドープファイバ(TDF)の基礎光物性の調査と増幅利得特性の2波長励起方式依存性を明らかにすべく、2種類の励起方式(1051&1560nmおよび1410&1560nm)について、その増幅特性とその励起メカニズムを検証した。 その結果、補助励起光(1560nm)強度が0mW、即ち単一波長励起の時は、前者が、信号光波長の全波長領域において増幅利得が上回り、主励起光1051nm時の増幅利得は、補助励起光強度が5mWのとき最大値を取り、その後増幅帯域を長波長側へシフトさせながら急激に低下した。一方で、後者(主励起光1410nm)の増幅利得は、補助励起光強度が40mWになるまで増大し、その後低下した。また、増幅帯域は、補助励起光強度が40mWに至るまでわずかに長波長側へシフトしているが、40mWを越えるとそのシフトは急激に強くなった。 2種類のTm^<3+>の励起方式について、その増幅特性とその励起メカニズムを検証した結果、主励起光波長の違いによりTm^<3+>の励起プロセスが異なることが示された。高効率な増幅とより低損失な領域(S-バンド)での増幅性能を考えると、主励起光としては、1410nm励起が有利であることがわかった。
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