研究概要 |
当研究者らは先に、層状窒化ハロゲン化物β-MNX(M=Zr, Hf ; X=Cl, Br, I)の層間にアルカリ金属をインターカレーションし、電子をドープすることにより、超伝導体が得られることを報告した.特に、β-HfNClの層間にLiとTHF(テトラヒドロフラン)がコインターカレーションしたLi_<0.48>(THF)_yHfNClはTc=25.5Kの高い臨界温度を示した.本研究では、物性物理研究者と共同して、超伝導機構を究明すると共に、新規層状窒化物の開発を行った.主な研究成果は次の通りである. 1.塩化アンモニウム等のハロゲン化アンモニウムをフラックスに用いるβ-MNX単結晶の高圧合成に成功し、精密X線構造解析を行った. 2.塩素脱離による新しい電子ドープ法の開発;塩素欠損β-ZrNCl<1-x>およびβ-HfNCl_<1-x>厩は大気中でも安定であり、アルカリ金属のインターカレーションにより電子ドープした超伝導体とほぼ同様な臨界温度を示すことを明らかにした. 3.同位体置換β-Hf^<15>NClを合成し、電子ドープにより超伝導体を誘導した. 4.共同研究者の藤らは、NMR測定により^<15>Nの同位体効果を解析した.キャリヤー密度の低い、二次元超伝導体に特徴があり、フォノン励起が弱く、従来のBCS理論では理解できない超伝導体であることを明らかにした。 5.共同研究者の浴野らは、ブレークジャンクション法により、電子ドープb-HfNCl超伝導体のギャップの測定に成功し、電子-フォノン相互作用に基づくBCS理論では説明できない大きいギャップを有することを示した. 6.超高真空薄膜作製装置を用いて、MBE法により、層状窒化物Sr_2Nの一軸配向膜の合成に成功し、高い金属伝導度を示すことを明らかにした.
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