研究概要 |
ナノ構造として,デンドリマー部位と半球型部位を有する配位子を合成し,錯体合成ならびに触媒反応を行った。デンドリマー部位としては,ポリフェニルエテル型の柔軟なデンドリマーをリン上に導入したホスフィン配位子,そしてポリフェニレン型の剛直なデンドリマーをピリジン環の3位に導入したピリジン型の2つのタイプの配位子を合成した。そして,ロジウム,パラジウムなどの後周期遷移金属前駆体と錯化させることにより,ナノサイズを有する分子触媒を調製し,触媒反応に供した。ホスフィン配位子を用いる触媒反応としては,ナノサイズの大きさを有する触媒環境の影響を最も受けやすいと考えられるヒドロホルミル化反応ならびにヒドロシリル化反応を試みた。その結果,ヒドロホルミル化反応においては,分岐生成物に対する高い選択性を確認した。また,ピリジン配位子はパラジウム錯体とともに空気を酸化剤として用いるアルコールの酸化反応に用いた。その結果,通常の場合は,パラジウム黒の析出を押さえることは極めて困難であるが,デンドリマーピリジン配位子を用いることにより,パラジウム黒の析出が全く見られず,均一系触媒を用いた中では最高のTONを得ることに成功した。 半球型構造を有するホスフィン配位子においては,その半球構造の直径とその深さが重要なファクターになると考えられる。我々は配位子とロジウム錯体を等モルないしは数倍モル反応させ,その溶液のリンNMRを観測した。その結果,半球型ホスフィンがロジウム上のホスフィン配位子の数を低く抑えることに極めて有効であることを見出した。
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