アセチレンに2価チタンアルコキシド試薬(Ti(O-i-Pr)_4/2 i-PrMgCl)を作用させ発生したアセチレン-チタン錯体は、α-オキシニトリルと位置選択的にカップリングし、アザチタナシクロペンタジエンを与えることを明らかにした。このチタナサイクルにスルホニルアセチレンを作用させると、両者のカップリング反応が進行するとともにスルホニル基の脱離を伴い、α-ピリジルチタン化合物が単一の異性体として発生し、加水分解によりピリジンが収率良く合成できた。すなわち、この皮応により異なる2つの非対称アセチレンとニトリルから、ただ1種類のメタル化されたピリジンの直接合成が可能になった。 次に、当初の予定通り、昨年度報告したアセチレン3分子のカップリング反応を、光学活性アセチレンエステルを基質の一つとして行ない、光学活性ビアリール化合物の合成を検討した。しかし、光学活性アセチレンエステルの反応性に問題があり、成功しなかった。そこで、新たに上述のピリジン合成を光学活性α-オキシニトリルを用いて行なったところ、出発ニトリルの光学純度を損なうことなく簡便に光学活性ピリジン類が合成できることを明らかにした。 さらに、多様なピリジン類の合成を検討し、1-(スルホニルナミノ)アセチレンを含むアセチレン2分子とニトリルとのカップリングが、2価チタンアルコキシド試薬によりやはりアミノ基上のスルホニル基の脱離を伴って進行し、加水分解後アミノピリジンを与える新しいタイプの反応を見い出した。 最後に、本年度の課題の1つである2価チタンアルコキシド試薬によるアセチレンの3量化のメカニズムが、中間体であるチタナシクロペンタジエンへの第三のアセチレンの[4+2]付加反応なのか挿入反応なのかを明らかにするべく、前者を行ないえないアレン基質を用いて検証したが反応は進行せず、結論を得るに至らなかった。
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