研究概要 |
本研究では2種類の新規含ヘテロ系カルボアニオン転位の開発研究を行なった.まず,環状アセタールを基質とする環拡大型アセタール[2,3]-Wittig転位を開発し,これが中員環ビニルエーテルの新規合成法として有効であることを明らかにした.すなわち,アクロレインなどのα,β-不飽和アルデヒドと適切なジオールから簡便に調製した6,7,8環状アセタールに対して塩基を作用させると環拡大型[2,3]-転位が円滑に進行し,それぞれ環員数が一つ増えた7,8,9員環ビニルエーテルを収率良く,かつ高立体選択的に与えることを見出した.またそれらの反応において基質のジアステレオマー間における顕著な速度論的分割現象を見出した.本新規転位は,海洋性天然物など多様な生理活性化合物の合成中間体として重要な中員環ビニルエーテルの効率的合成法として有用である.一方,フタルイミド由来のヘミアミナールを基質とするaza-wittig転位についても検討した.その結果,ヘミアミナールの置換様式によって環拡大型[1,2]-転位,もしくは[2,3]-転位が高選択的に進行することを見出した.本反応は官能基化された含窒素環状化合物の立体選択的合成法として有用である.更にまた,アルキニル基を導入した類似の転位系が多置換ピロールを高収率で与えることを見出し,その反応の一般性,機構について精査した.
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