研究概要 |
本年度は官能基化されたヘテロ環状化合物の新規合成法として下記,三種の転位を開発した. 1)ヘミアセタール系Stevens転位:6員環ヘミアセタール構造を有するアンモニウム塩にアルコキシド塩基を作用させると,多官能基化されたヘミケタールが立体選択的に得られることを見出した.この反応では,i)ヘミアセタールの開環,ii)生じたケトンのα位脱プロトン化,iii)Stevens転位,iv)ケトンα位の異性化と生じたヒドロキシケトンの閉環,という多段階反応が連続的に進行していると考えられる.本転位はジアステレオ選択的なStevens転位の最初の例であり,含窒素化合物の立体選択的合成法として有効である. 2)環状アセタールの縮環型カルボアニオン転位:パントラクトン由来の環状アセタールにアルキルリチウム(RLi)を作用させると,多官能基化されたオキセタンが立体選択的に得られることを見出した.また,その機構について精査した結果,反応がi)アセタールC-O結合の開裂を伴うカルベンの生成,ii)カルベンのRLiへの挿入,iii)分子内求核付加,という多段階を経て進行していることを明らかにした. 3)3成分連結型多置換ピロールの合成:フタルイミド由来のアルキニル置換ヘミアミナールにアルキルリチウムを作用させると,三置換ピロールが収率良く得られることを見出した.反応は分子内カルボリチオ化反応を経て進行していると考えられる.
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