研究概要 |
本申請課題においては,糖やヌクレオチドなど,重要な生体分子を高精度に認識する人工分子(人工受容体)を開発することを第一段階の目標とする.第二段階として,開発した人工受容体の特異的な分子認識能力を利用して,重要な生理活性分子に対するwaste-freeな合成法(できるかぎり保護基を使わない直線的な合成法)の確立を目指す. 既に本申請者らは,糖を水素結合で認識できる人工分子として大環状ポリピリジン構造を持つ人工受容体の開発に成功している.そこで本課題研究においては,基本骨格のエチニルピリジン部位を多量化したエチニルピリジンオリゴマーへと研究を展開し,それらの糖変換反応への適用を検討することとした.昨年度の研究において,エチニルピリジンオリゴマーの合成に成功している.また,オリゴマーと糖との錯形成によって,オリゴマーにキラルな高次構造が誘起されることも証明した. そこで今年度は,上述の成果を基に,さらに以下の項目へと研究を展開した. 1.エチニルピリジンオリゴマーと糖との錯体に関して,分光学的手法を用いて詳細に検討した.その結果,高次構造は糖質との水素結合によって誘起されていること,また,ある程度の鎖長を有するオリゴマーにのみ高次構造の形成が見られることを突き止めた. 2.エチニルピリジンオリゴマーに糖との反応に必要な官能基を連結させた,反応性エチニルピリジンオリゴマーの合成方法を確立した. 3.反応性エチニルピリジンオリゴマーと糖との錯体に関して,分光学的手法を用いて詳細に検討した. 4.上記エチニルピリジンオリゴマー類を用いた新規糖変換反応に関して,その基礎データを蓄積した.
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