研究概要 |
今年度の主テーマとして、カーボンナノチューブのモデルとしてフラーレンを用いた有機化学反応を利用して、カーボンナノチューブ表面に炭素-炭素結合や炭素-ヘテロ原子結合を形成させ共有結合を介した有機化学的修飾法を施すための反応剤の開拓を行った。さらにここで得られた知見を基に、市販単壁型カーボンナノチューブを基質に用いて、フラーレンに対し付加反応生成物を与えることが分かったアニリン,オルトフェニレンジアミン,パラジウムメタラサイクル錯体等の反応剤との熱および光反応を研究した。現在、市販単壁型カーボンナノチューブはメーカーやロットによって純度,結晶性・非結晶性構造特性,不純物の組成などにばらつきが大きく、再現性のある結果を得るためにカーボンナノチューブを実験室で精製する方法についても研究している。さらに、カーボンナノチューブはトルエンなどの有機溶媒に不溶であるため、これを有機溶媒に効率よく分散させる方法についても検討した。フラーレンとのモデル実験から得られた知見の一部は論文として発表済みである。カーボンナノチューブとの反応生成物の構造については、赤外吸収スペクトル,ラマンスペクトル,示差熱分析,元素分析などの手法を通じて、反応剤の導入効率やカーボンナノチューブに見られる結晶性・非結晶性構造部位などのどの部位に反応が起こっているかなどを解析している。このようなカーボンナノチューブとの反応についての結果はまだ発表の段階には至っていないが、有機化学反応は非結晶性構造部位に起こり易いのではないかという知見を得ている。
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