研究概要 |
平成14年度は主に「シクロファンの新規効率合成法の開発とその面不斉制御」を中心に研究を行った。申請者らは先にピリジノファン分子の短段階合成法と異性化晶出による面不斉制御法を報告しているが,ピリジン環構築に伴って同時に架橋鎖を形成する「シクロファン骨格合成法」であるため,その収率は約25%程度に留まっている。今回,芳香環上の直鎖置換基を直接環化して架橋鎖を形成する「シクロファン架橋鎖合成法」として,ヨウ化サマリウムを用いた分子内ピナコールカップリング反応により,面不斉骨格となるパラシクロファン誘導体の合成法を検討した.その結果,炭素数が8-12の架橋鎖を有するパラシクロファンジオール体が最大64%の収率で得られた.これらの還元により母体のパラシクロファンへ変換し,既知の合成法により面不斉を持つ架橋型安息香酸の合成に成功した.また,カルボン酸をtertiary-leucinol由来のアミド側鎖に返還したところ,得られたジアステレオマー分子が固体・液体のペアとなり,11炭素を有する[11](2,5)パラシクロファン誘導体の異性化晶出を経てR体の面不斉を持つキラルな架橋安息香酸を与える合成手法を見いだした.また,10炭素架橋鎖を有する架橋型安息香酸についてもその効率的な不斉分割に成功している.これらの合成法と面不斉制御法は,従来ピリジン系シクロファンのみで可能であった面不斉の立体制御をベンゼン系シクロファンでも可能にしたものであり,今後面不斉触媒を設計する上での合成素子の供給法として有用であるものと考えている. なお,本年度は交付申請書に記載した設備に加え,研究の遂行上必要であった「自動合成装置」と「真空ポンプ」を設備として購入した.
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