研究概要 |
熱帯熱マラリア原虫が急性期患者血清中に産生する解糖系酵素エノラーゼの抗原決定部位と同定されたペプチドGlyPheAlaProAsnIleLeuAsnAlaAsnGluAlaLeuAspLeuLeuGluGluGluGluを基盤とするマラリアワクチンを創製するために、このペプチドを含む高分子化合物を合成した。アミノ末端にスペーサーとしてアミノヘキサメチレンカルボン酸を入れ,メタクリロイルクロリドと反応させて人工抗原ペプチドモノマーを得た。このモノヤーはカルボキシル末端に溶解性を向上させる目的でグルタミン酸残基を4個付加しているにもかかわらず難容性の化合物であり,メタクリルアミドと共重合させる溶媒の選択が困難であった。結局,人工抗原ペプチドモノマーをメタクリルアミドに対して2モル%の比でジメチルスルホキシドに溶かして,γ-線照射による放射線重合を行い,目的の人工高分子抗原を合成した。得られた人工高分子抗原の熱帯熱マラリア患者血清との反応をELISA法で測定した。その結果,人工抗原がわずか2%しか含まれていないにもかかわらず,熱帯熱マラリア患者血清に対するRFU値は健康者の血清に対するそれの2倍を示し,明らかに反応性が高いことが分かった。更に,この人工抗原ペプチドモノマーをマラリア感染診断剤として利用することを目的に,2官能性モノマーとを共重合させて,人工抗原を担持した高分子微粒子(直径1μm)を得た。現在,この微粒子を用いて感染診断活性試験を行っている。
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