水素結合性主鎖を有する超分子繊維の創製とその機能開発

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14350482
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 荒木 孝二 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (40134639)
• 研究分担者: 務台 俊樹 東京大学, 生産技術研究所, 助手 (80313112)
• キーワード: 水素結合 / 超分子ポリマー / 繊維 / 交互共重合

研究概要

我々は、多重の水素結合により形成される擬似高分子鎖を柔軟な置換基で覆うという分子設計に基づいてグアノシン誘導体を設計し、溶融紡糸により柔軟な超分子繊維を得ることに成功している。分子設計の汎用性を確かめ、さらに、水素結合の多重化による強度の向上を目指して、トリアミドシクロヘキサンが形成する三重の水素結合主鎖の周りを柔軟なアルキルシリル基で囲んだ擬似高分子鎖を設計した。3本のアルキルシリル基を導入した誘導体(1)では、赤外吸収スペクトルにより水素結合主鎖の形成が確認されたが、アルキルシリル基を6本導入した誘導体(2)は液体となり、アルキルシリル基の立体障害により水素結合主鎖が形成されていない事がわかった。1は融点を持たないものの、加熱紡糸により柔軟な超分子繊維を得ることができた。X線回折より計算された配向関数はfc=0.6であり、繊維中での擬似高分子鎖の比較的良い配向性が示されたが、ドメイン形成により水素結合の多重化による強度の向上は成されず破断強度は1MPa程度であった。しかし、水素結合主鎖を変えても同様に柔軟な超分子繊維が得られたことから、この分子設計の有用性が確認された。さらに、単独では全く水素結合を形成しない2においても、1との混合により水素結合主鎖を形成することができ、2の割合が50mol%以下の場合はほとんどの分子が水素結合主鎖形成に関与している。かさ高い2の隣に1が来ることで立体反発が軽減され、1-2-1のセグメントを有する共重合型擬似高分子鎖が形成されたと考えられ、特に等モル混合物においては、さらに交互性の高い交互共重合型擬似高分子鎖の形成が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] 高澤亮一, 吉川功, 荒木孝二: "水素結合性擬似高分子鎖を有するトリアミドシクロヘキサン超分子繊維の設計,作製と性質"高分子論文集. Vol.59,No.10. 616-622 (2002)
• [文献書誌] T.Mutai, J.D.Cheon, G Tsuchiya, K.Araki: "6-Amino-2,2 ': 6 ',2 "-terpyridines as highly fluorescent compounds-effect of the number of pyridine rings on fluorescence properties"Journal of the Chemical Society-Perkin Transactions 2. Vol.002,No.5. 862-865 (2002)
• [文献書誌] T.Akasaka, H.Inoue, M.Kuwabara, T.Mutai, K.Araki: "Synthesis and properties of an efficient and switchable photosensitizing unit for a photo-induced energy transfer systems"Dalton Transactions. Vol.2003 No.5. 815-821 (2003)
• [文献書誌] T.Akasaka, T.Mutai, J.Otsuki, K.Araki: "Photo-induced energy transfer and its switching in dyad and triad chromophore systems composed of coumarin, Ru(II) and Os(II) terpyridine-type complexes"Dalton Transactions. Vol.2003(In press). (2003)
• [文献書誌] A.Kishimoto, T.Mutai, K.Araki: "A distance-controlled oligopeptide linker as a novel photo-induced energy transfer switch by secondary structural transition"Chemical Communications. Vol.2003 No.6. 742-743 (2003)
• [文献書誌] R.Takawasa, K.Murota, I.Yoshikawa, K.Araki: "Steric Factor-Directed Alternating Supramolecular Copolymer Composed of Hydrogen-Bonded Triamidecyclohexane Units"Macromolecular Rapid Communications. Vol.24(In press). (2003)