研究課題
基盤研究(B)
本研究は、現在新しい不斉合成法として注目されている超分子不斉光反応の反応場として生体高分子を「不斉反応場」として用い、取り込んだ光反応基質や増感剤による不斉光反応を行うことにより、高効率な不斉光反応を達成しようとするものである。これまでウシ血清アルブミン(BSA)を反応場とする2-アントラセンカルボン酸(AC)の不斉光環化二量化反応を検討しBSAが有効な不斉反応場として利用できることを報告した。しかしBSAは立体構造や結合サイトに関する情報は乏しい。一方、ヒト血清アルブミン(HSA)は1次構造や立体構造、また様々な基質との結合挙動について情報が豊富なため、より詳細な反応機構の検討が期待できる。そこで、本年度はHSAを不斉反応場とするACの不斉光環化二量化反応について検討した。HSA内へのACの相互作用について、円二色(CD)、UV、蛍光スペクトル、ならびにHSAに結合することが知られている化合物を結合阻害剤として用いた時の、CDスペクトル挙動により検討した。その結果、HSAにはACが1分子結合する第1サイト、1分子、3分子、5分子がそれぞれ結合する第2、第3、第4サイト、そして10分子以上が結合する第5サイトと少なくとも5つの結合サイトの存在を明らかとした。また各サイトについて詳細に検討した結果、第1サイトは非常に疎水的であり、また第2サイトは蛍光が効率よく消光され、第3サイト以降は比較的親水的であり、各サイトはそれぞれ異なった環境であることが明らかとなった。次に各サイトに存在している時のACの光反応について検討した。特にエナンチオマー過剰率(ee)について着目すると、head-tail二量体(H-T)において最高76%ee、head-head(H-H)二量体において最高75%eeが得られHSAも不斉反応場として有効に機能することを明らかとなった。またHSA濃度が減少してもH-Tのeeは大きく減少しなかったのに対し、H-H二量体のeeは大きく減少した。これは、H-Tについてはどのサイトにおいても同じエナンチオマーを与えるのに対し、H-Hは、第4、第5サイトでは、第3サイトで得られるエナンチオマーのアンチポード体を与えるためであると考えられる。またpH、温度などの外部因子によりeeの制御が可能であることも見出した。
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