研究概要 |
申請者らは、リビングラジカル重合法をいち早く表面グラフト重合に適用し、鎖長および鎖長分布の制御に加え、グラフト密度が従来法の10倍にも及ぶ超高密度化にはじめて成功した。得られたポリマーブラシの良溶媒中での構造と物性を評価した結果、グラフト鎖はほぼ伸びきり鎖長にまで高度に伸張され、従来にない表面特性を示すことを見いだした。本研究は、この研究成果を拡張・発展させ、新規分子組織体としての超高密度ポリマーブラシ(濃厚ブラシ)の基礎科学を確立することを目的とする。 本年度は、前年度に引き続き、溶液中におけるポリマーブラシ特性の解析と評価を行うとともに、バルク特性に着目し、特に、ポリマーブラシ層とバルク高分子の相溶性(相互進入の程度)について検討した。これは、高分子の重要なバルク物性であるのみならず、複合材料の高性能化の観点からも重要である。具体的には、重水素化ポリメタクリル酸メチル(PMMA_d)(M_<n,brush>=44000,σ=0.7chains/nm^2)ブラシ上に分子量の異なる一連の軽水素化PMMA(PMMA_h,M_<n,cast>=780000-2400,Mw/Mn<1.1)をキャストして熱処理を施した後、中性子反射率測定によりポリマーブラシの密度プロファイルを評価した。これにより、低密度ポリマーブラシ系はマトリクスポリマーによって大きく膨潤するのに対して、高密度ポリマーブラシ系はほとんど膨潤しておらず、高密度化がその相溶性に著しい影響を与えることを明らかにした。また、ブロック共重合体ブラシの形成する多層構造についても、重水素化コントラストを付与し中性子反射率測定を行うことにより評価した。現在、これらの結果を基に、MDシミュレーションを併用し、ポリマーブラシの伸張機構やネマティック効果について検討を進めている。
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