研究課題
基盤研究(B)
本研究では、リビングラジカル重合法により合成可能となった超高密度ポリマーブラシ(濃厚ブラシ)について、新規分子組織体としての基礎科学の確立を目的に、膨潤状態ならびに乾燥(バルク)状態における構造と物性を系統的に研究した。その中で、高密度化に由来する新しい特性-例えば、優れたトライボロジー特性、サイズ排除効果、生体適合性、バルク膜の熱的・機械的特性の向上、弱電解質ブラシの特異な膨潤/脱膨潤特性など-の発現を実証した。特筆すべき物性は、膨潤濃厚ブラシの吸着・摩擦特性が従来の準希薄ブラシと著しく異なることである。すなわち、濃厚ブラシ間には、飛躍的に大きな反発力が働き、特に、良溶媒系では対向ブラシ間の絡み合い等による吸着力は全く認められないこと、さらに、濃厚ブラシ間の摩擦力が、準希薄ブラシ間と比較して、圧倒的に小さいことを明らかにした。理論的検討を加え、濃厚ブラシでは、膨潤ブラシ層の濃厚溶液系ゆえの大きな浸透圧効果が大きな荷重を支え得ることに加え、接触領域においては、局所濃度の増大の解消と(高伸張状態がゆえに得られる)大きな形態エントロピーゲインのために、グラフト鎖は相互侵入せずに収縮して絡み合いを抑制し、上記のような特性が発現したと結論した。高反発特性と低摩擦特性を兼ね備えた濃厚ブラシ表面は、機能性表面として大きな可能性を有すると期待される。
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