研究概要 |
有機LEDの発光層としてIr系りん光材料を用いる場合、低電流密度下では~10%以上の高効率発光が得られるが、高電流密度下(J≧100mA/cm^2)においてはTriplet-Triplet annihilationに基づく顕著なEL量子効率の低下(Roll-off現象)が生じる。一方、本研究では,蛍光材料を用いた有機LEDおいても、高電流密度下において発光効率の顕著な低下が生じることを見出した。有機LEDのレーザーデバイス化を考えた場合、高電流密度下での励起子失活の制御は重要な課題である。本研究では蛍光材料を発光層として用い、高電流密度下(J≧1000mA/cm^2)でのEL量子効率の特異な挙動について検討を行った。デバイス構造として、ITO/α-NPD(50nm)/Alq_3(50nm)/cathodeを基本に,陰極としてMgAg/Ag、LiF/Al、C_6H_5COOLi/Alを、発光層として未ドープAlq_3薄膜,クマリン6、DCMを~1wt%程度Alq_3にドープしたデバイスについて検討を行った。また、測定中に発生するジュール熱の影響を調べるためにシリコン、サファイア基板上にITOをスパッタし,上記と同じデバイス構造でEL特性の温度依存性を観測した。いずれのデバイスもJ〜1000mA/cm^2までは、ほぼ一定のEL量子効率を示し、これ以上の電流密度から顕著な量子効率の低下が観測された。測定結果にSinglet-Singlet annihilation modelをフィッティングさせたところ良好な一致が見られ、高電流密度下においてS-S annihilationの発生が示唆された。未ドープデバイスにおいて,J〜1000mA/cm^2における励起子密度は約1.0×10^<17>/cm^3であり、分子数約10^<21>/cm^3に比べて低い。ここで,再結合サイトの幅を~5nmと過程した場合,Alq_3におけるS-S annihilationの速度定数(k_<ss>)は1.25×10^<-10>となり,光学的に求めた実験値(γ_<ss>〜1.25×10^<-10>)と近い値が得られた。
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