新しい環境応答ハイドロゲル・ポリサイラミンの設計と評価

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14350502
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 東京理科大学
• 研究代表者: 長崎 幸夫 東京理科大学, 基礎工学部, 助教授 (90198309)
• キーワード: ポリサイラミン / ゴム弾性転移 / pH応答性ハイドロゲル / 力学特性 / 薬物送達システム / アクチュエーター

研究概要

申請者は新規高分子合成の観点から、長年にわたり新しい骨格を有する高分子材料設計に携わってきた。この中で主鎖にアミノ基と有機シリル基を交互に有する「ポリサイラミン」化合物が、pHや温度によって疎水性から親水性に変化し相転移する信号応答性材料であるとともに、相分離に伴い堅く広がったロッド状態(親水性)から柔らかく縮まったグロビュール状態(疎水性)にゴム弾性を著しく変化させる「ゴム弾性転移」を併せ持つユニークな材料であることを見いだしてきた。さらに極めて最近、このポリサイラミンハイドロゲルが、pH変化による体積相転移に伴い、その粘弾性を著しく変化させることを見いだした。これは通常のハイドロゲルが膨潤することによって柔らかくなるのに対し、ポリサイラミンでは親水性ネットワークが堅く広がったコンフォメーションを取るため、結果として「膨潤するとともに堅くなる」、ユニークな材料となる。また、通常のpH応答ゲルがpHジャンプに伴い表面スキン層を形成した後に平衡収縮に達するのに対し、ポリサイラミンハイドロゲルのpHジャンプでは安定なスキン層が数ヶ月にわたって維持されることがわかってきた。
本研究ではこのようにユニークな特性を示すポリサイラミンをプロトン化状態で水溶液とし、架橋させることに成功した。これまで脱プロトン化状態で有機溶媒中で合成してきたゲルに比べ、低イオン強度下においてもゲルの形状を維持していることが確認された。これは広がった棒状状態で架橋反応をせしめるため、理想的な架橋転換距離を有するネットワークが形成したためと考えられる。

研究成果

• [文献書誌] 長崎幸夫: "Eduardo Jule, Yukio Nagasaki and Kazunori Kataoka, Lactose-installed poly(ethylene glycol)-poly(D, L-lactide) block copolymer micelles exhibit fast-rate binding and high affinity towards a proteinbed simulating a cell surface. A surface plasmon resonance study"Bioconjugate Chemistry. 14. 177-186 (2003)
• [文献書誌] 長崎幸夫: "Fumiyo Kurusu, Hiroyuki Ohno, Mitsuhiro Kaneko, Yukio Nagasaki, Kazunori Kataoka, Functionalization of Gold Electrode Surface with HeterobifunctionalPoly(ethylene oxide)s having both Marcapto and Aldehyde Groups"Polymers for Advanced Technologies. 14. 27-34 (2003)
• [文献書誌] 長崎幸夫: "Ogawa Ryutaro, Nagasaki, Yukio, Shibata Naoya, Otsuka Hidenori, Kataoka Kazunori, Core-Shell Type Polystyrene Latex Possessing Reactive PEG Brushes on the Surface for High Performance Immunodiagnostics"Polymer Journal. 34. 719-726 (2002)
• [文献書誌] 長崎幸夫: "Sugar-Installed Block Copolymer Micelles : Their Preparation and Specific Interaction with Lectin Molecules"Biomacromolecules. 2. 1067-1070 (2002)
• [文献書誌] 長崎幸夫: "Temperature-related change in the properties relevant to drug delivery of poly(ethylene glycol)-poly(D,L-lactide) block copolymer micelles in aqueous milieu"Journal of Controlled Release. 82. 359-371 (2002)
• [文献書誌] 長崎幸夫: "Eduardo Jule, Yukio Nagasaki and Kazunori Kataoka, A Surface Plasmon Resonance Study on the Interaction between Lactose-installed Poly(ethylene glycol)-Poly(D, L-lactide) Block Copolymer Micelles and Lectins Immobilized on a Gold Surface"Langmuir. 8. 10334-10339 (2002)
• [文献書誌] 長崎幸夫: "ナノマテリアル最前線 現実になった究極のものづくり -化学フロンティア,平尾 一之編"化学同人. 10 (2002)