液体ロケットエンジンなどの多くの高負荷エンジンにおいては、噴射液体と同軸に気体を高速噴射して滴体を短距離で微粒化する手法が採用されている。しかし、その微粒化機構は、可変なパラメータが多く実験データの整理が難しいために、いまだによく理解されていない。本年度の研究では、高圧容器の内部の気体を回流させる装置を製作し、微小重力実験環境において、高圧窒素ガス流に同軸にSF6液ジェットを低速で噴射したときに噴射液の挙動を観察して、同軸流ジェットの微粒化機構を調べた。その結果、 (1)静止窒素ガス中にSF6液を噴射したときの噴射液の分断距離(ノズル口径で無次元化した)は、ウェーバー数を通してノズル口径、圧力、噴射速度に依存しないことがわかった。 (2)この事実と噴射液に励起される不安定波の増幅率の関係を使って、理論的に裏付けられた同軸流ジェットでの噴射液の分断距離の予測式を構成し、実験結果と比較したところ良好な一致を見た。 (3)このことより、ガス流の乱れが噴射液の不安定波の発展に与える影響を表す係数因子を除いて、噴射液が分断に至る不安定波の発達は、気液速度差に基づいたウェーバー数を用いて、静止気体中に液体を噴射した場合と同じ関係を満たすことが判明した。 (4)この結果は、乱流微粒化過程において発生する多数の微細な液糸の分断の物理機構を調べるのに、静止ガス中に噴射した液体の分断機構を調べればよいとする、本研究の基礎的な考えを支持するものであり、本研究の方法論の実験的に妥当性が実証できた。 (5)また、同軸流ジェットによる微粒化の利点は、ガス流の乱れの影響を強めることによって、限りなく迅速な微粒化を可能にすることができる点にあることが判明した。
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