研究概要 |
昨年度に製作し、World Space Congress (Houston,2002年10月)で展示を行ったサンドイッチ型宇宙太陽発電衛星(SPS)の総合システム・モデルの改良を本年度行った。製作したモデルは、インフレータブル構造を用いた一対の反射鏡、サンドイッチ型の発送電モジュール、地上の受電アンテナで構成され、太陽光からレクテナまでの総合的な変換効率、SPS構想の可能性および効率面での実用性を示すことを目的に試作した。 モデルは反射鏡で集光し太陽電池で発電し、発電された電力は増幅器によりマイクロ波に変換され、レクテナにより元のDC電源に再変換することに成功した。しかしながら、効率は予想より低く、改良点が多々見いだされた。本年度はこの改良を行った。増幅器の改良点は、高出力化と高効率化、特に無駄な消費電力の削減をおこなった。最終段の増幅器において、Inverse Fクラスによる高効率化と10Wクラスの高出力化を目指した。バイアス回路では、安定化のため抵抗に電流を常時流していたが、LC回路への置き換えで、安定化と省エネを実現した。前置増幅器でもFクラスによる高効率化と不必要な消費電力の削減を行った。移相器では、移相器要素間でのインピーダンス不整合をスタブにより調整し、1dB以上向上することができた。移相器と増幅器の干渉の低減を行うために、増幅器の段数を2段から3段へと変更し、干渉を低減することができた。この改良により全増幅器への分配器の電力が減り、分配器の損失も抑えることができた。4素子のスロットアンテナからなる送電アンテナを個別に調整をとることにより、送電電力を増やすことができた。レトロディレクティブ・アンテナにおける位相差検出回路も既製品の検出器を2段にすることにより、高速で高精度な測定を実現することができた。SPS建造でも五角ねじり折りによるインフレータブル柱の安定な伸展を実現した。 以上の改良の成果をもとに来年度総合的な効率面における検討を行う予定である。
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