モジュール型膜面展開構造物の力学特性に関する研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14350516
• 研究機関: 独立行政法人宇宙航空研究開発機構
• 研究代表者: 名取 通弘 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙構造・材料工学研究系, 教授 (00013722)
• 研究分担者: 石村 康生 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助手 (10333626) ; 奥泉 信克 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙構造・材料工学研究系, 助手 (10321564) ; 樋口 健 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙構造・材料工学研究系, 助教授 (60165090)
• キーワード: 階層モジュール構造 / ケーブル構造 / 膜面構造 / 展開構造 / 柔軟要素 / リンクル現象 / 構造制御 / 構造物システム

研究概要

本研究は、階層モジュール構造の概念に関する研究とケーブルや膜面などの柔軟要素の力学特性研究の両者を結合して、柔軟構造要素からなるモジュールを階層的に結合した効率のよい宇宙構造物システムの提示を目的としている。平成15年度では、制御までを含めたモジュール構造の基本概念の検討、ケーブル構造の大振幅動特性の検討、および膜面構造に現れるリンクル現象の検討を行っている。
モジュール構造の基本概念の検討では、構造物の構成に成長の概念を導入して、モジュール型構造物を構成することを研究した。第1世代の構造物を単一のモジュール自体とし、第2世代の構造物はその第1世代の構造物が多数集まったモジュール構造物、そして第3世代の構造物は第2世代の構造物を一つのモジュールとしてそれを多数集めたモジュール構造物、そして次々と次世代の構造物を同様にして構成していくという階層構造物の概念を提示した。モジュールの集め方は世代によって単一ではなく、変えることができるとして、多様な形態の構造物システムを系統的に構成できることを示した。同時に、ごく単純なモジュール構成の構造物について、その力学特性を明らかにし、そのような構造物をどのように制御することが有効かをエネルギー的観点から検討した。
ケーブル構造の大振幅動特性の検討では、軌道上における柔軟な構造物システムが重力の作用のもとに、,どのように運動するかを明らかにし、その時に必要な制御方式や制御力を明らかにした。特にケーブルが弛んで、張力が働かない場合についての検討を行っている。
膜面構造に現れるリンクル現象の検討では、曲げ剛性を考慮したシェルエレメントにより、詳細な解析を行って、張力が十分でない場合の膜面の変形を厳密に求めている。発生したリンクルが特に境界拘束の影響を大きく受けることを明らかにした。また、矩形膜の一端を引っ張って生じるリンクル現象の厳密な実験を行い、解析が変形形状を非常によく表現できていることを示した。

研究成果

• [文献書誌] Takeichi, Natori, Okuizumi: "Fundamental Strategies for Control of a Tethered System in Elliptical Orbits"J.Spacecraft and Rockets. 40・1. 119-125 (2003)
• [文献書誌] 岩佐 貴史, 名取 通弘, 樋口 健: "リンクル解析における分岐座屈理論と張力場理論の比較検討"構造工学論文集(日本建築学会). 49B. 319-325 (2003)
• [文献書誌] 岩佐 貴史, 名取 通弘, 樋口 健: "円形張力膜のリンクル特性に関する数値解析"日本航空宇宙学会論文集. 51. 184-189 (2003)
• [文献書誌] Ishimura, Natori, Higuchi: "Deployment Analysis and Control of Modularized Structures"JSME Int'l.Journal Series C. 46. 622-630 (2003)
• [文献書誌] Ishimura, Natori, Wada, Higuchi: "Averaging Interaction in Decentralized Control of Modularized Structures"Trans.Japan Soc.Aeronautical and Space Sciences (JSASS). 46. 68-73 (2003)
• [文献書誌] 岩佐 貴史, 名取 通弘, 樋口 健: "リンクルに関する実験とそのスペクトル評価"構造工学論文集(日本建築学会). 50B. 235-242 (2004)