地球観測衛星で取得したデータは、入射エネルギー等の物理量に変換する必要がある。地球温暖化等、衛星データを利用した環境解析では、この校正後のデータが使われるため、校正精度の向上は、衛星による地球観測の根幹に関わる問題である。多くの衛星搭載の光学センサでは、基準光源あるいは太陽光測定機構を搭載しており、軌道上での校正基準として用いられているが、校正基準の出力値が時間と共に低下を示す事象が報告され、問題となっている。そこで、基準光源測定値の低下傾向の原因として有力視されている、衛星光学系への微粒ダストの付着について、光学系に及ぼす影響の定量評価を行った。 本年度に行った計測は、(1)粉体試料を用いた光学面の表面清浄度と遮蔽面積率の相関、(2)衛星への粒子付着量評価における捕集板法とテープ法の比較、(3)衛星打ち上げ前に衛星が保管される宇宙開発事業団種子島宇宙センターの衛星組立棟内部環境に浮遊する粒子組成分析、(4)HIIA-4号機の衛星分離画像データを用いた軌道上発生粒子量の推定、および(5)衛星搭載用拡散板のウィットネスサンプルを用いた地球観測センサGLIの太陽光拡散特性評価である。 (1)および(2)については、これまでにも数値計算モデルはあったものの、表面清浄度の広い範囲に渡って、実測を行い数値計算の妥当性を評価した。(2)は実際の衛星保管現場でのコンタミネーション管理に用いられる2方法の比較を行ったものである。(4)はこれまで知られていなかった軌道上での粒子の挙動について、ロケット搭載カメラで得られた画像を用いて、定性的ながら国内で初めて評価を行ったものである。(5)は実際に衛星センサに搭載されている拡散板のウィットネスサンプルを用いており、実験室での精密な計測を行うことにより、軌道上校正の精度向上を目指すとともに、紫外線等による拡散板劣化前のデータとして、今後の経年変化の基準となるものである。
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