地球観測衛星で取得したデータは、入射エネルギー等の物理量に変換する必要がある。地球温暖化等、衛星データを利用した環境解析では、この校正後のデータが使われるため、校正精度の向上は、衛星による地球観測の根幹に関わる問題である。多くの衛星搭載の光学センサでは、基準光源あるいは太陽光測定機構を搭載しており、軌道上での校正基準として用いられているが、校正基準の出力値が時間と共に低下を示す事象が報告され、問題となっている。そこで、基準光源測定値の低下傾向の原因として有力視されている、衛星光学系への微粒ダストの付着について、光学系に及ぼす影響の定量評価を行った。 本年度に行った計測は、(1)軌道上での荷重および衝撃付加による粒子状汚染物質の脱離特性評価、(2)土壌成分粒子付着による光学面散乱特性評価、(3)有機物成分付着による光学面散乱特性評価、(4)地球観測センサ光学系の光学要素配置による偏光特性変化の評価、および(5)ガス状汚染物質の吸着特性評価用の計測装置開発である。 (1)は2002年12月に打ち上げられた旧宇宙開発事業団開発の地球観測センサであるグローバルイメージャで見つかった特異なセンサ出力値の経時変動の原因として、粒子状汚染物質の可能性を評価したものである。(2)および(3)については、これまでにも数値計算モデルはあったものの、実際の衛星保管環条件を再現した実測データとモデルとの比較は少なく、より現実的な条件での計測が行えたものと考えている。(4)はセンサ内部で発生する偏光による観測精度低下を抑えるための手段として、光学要素を3次元的に配置して偏光を打ち消す手法の妥当性を評価したものである。最後に(5)はガス状の汚染物質の吸着によりセンサの観測精度が低下する現象について、定量的な評価を行うため、ガス吸着量と光学要素の透過率変動を計測するための装置の開発に着手したもので、今年度は基本性能の確認を完了した。
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