研究概要 |
多くの衛星搭載の光学センサでは、基準光源あるいは太陽光測定機構を搭載しており、軌道上での校正基準として用いられているが、校正基準の出力値が時間と共に低下を示す事象が報告され、問題となっている。そこで、基準光源測定値の低下傾向の原因として有力視されている、衛星光学系への微粒ダストの付着,および分子ガスの吸着に対し、光学系に及ぼす影響の定量評価を行った。 その結果、まず微粒ダスト付着に関しては、以下の成果が得られた。 1.衛星保管環境下においては、人為発生起源と考えられる微粒子が付着粒子の80%を占める 2.光学面清浄度と遮蔽面積率についての経験則を実験室で検証し、数値モデル化を行った 3.土壌成分粒子付着に伴う光学面の二方向反射特性の測定を行い、その結果を散乱モデルと比較することで、表面清浄度と光学面散乱の相関を導いた 4.衛星光学系への付着の主要因である人為起源の微粒子についても、人工コラーゲンを用い、(3)と同様の解析を行い、清浄度管理基準の根拠データを示した 5.光学面に付着した微粒子が、衛星打ち上げから運用期間を通じて、どのように脱離するかを実験室レベルで再現し、地球観測センサGLIで見られた軌道上での出力値異常との因果関係を検討した。 一方、分子ガス吸着に関しては、 6.光学要素に吸着するガス種を特定し、吸着による光学要素の透過率変動への寄与を評価するための計測装置を開発した。 7.光学硝材にCO2,NH3,O2,N2を吸着させ、可視・赤外域(0.3〜20μm)での透過率変動を計測した。計測範囲内で大局的な変動は観測されなかったが、硝材起因のOH基の吸収プロファイルがガス吸着により変動することを確認した。 以上の結果が得られた。これらの結果は、今後の衛星の軌道上較正精度向上のための基礎データとして用いられる。
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