研究概要 |
平成16年度の研究実績の概要は以下の通りである。 (1)表面形状の測定法と結果の処理法の確立 全面腐食した腐食平板の表面形状をレーザー式センサーをスキャンさせることにより精密に測定し、その結果をデジタルデータ処理し、CADシステムの3次元形状データとして保存する手法を確立した。さらにこのCADデータをCAMシステムに転送し、NCフライス盤による引張り試験片表面加工を可能とした。加工された表面の形状測定を行い、10ミクロン程度の精度で表面加工再現が可能である。 (2)人工腐食表面形状再現試験における相似則の研究 上記の任意形状表面加工システムにより、直径20mm、直径と深さの比8:1の人工腐食ピットについて種々のピット配置を持つ試験片を製作し、その降伏挙動、引張り強度、破断伸びを実験的に調べた。また、基準寸法に対して寸法が1/2,1/4の試験片を作成し、試験片の機械的性質に及ぼすピットの影響を実験的に検討した。得られた結論は、以下の通りである。 ●腐食ピットの存在により、上降伏点近傍の挙動が現れにくくなるものの、破面を構成する最小断面積で定義される引張り強度は平滑材と比べてわずかに低下する程度である。 ●最も顕著な特徴は、伸びが平滑材の6割程度まで低下することである。これは、経年構造の衝突・座礁時の吸収エネルギを考察するとき極めて重要な論点となる。 ●相似試験片による応力-ひずみ関係の実験結果は等価であり、実物大の試験を行わなくても小型相似試験片により機械的性質の推定が可能であることがわかった。今後、より大型の試験体との比較検討が望まれる。 (3)経年船の腐食表面再現試験 上記任意形状表面加工システムにより、1997年に日本海で折損沈没事故を起こし、海洋油濁汚染を起こしたナホトカ号の船底外板を用いた再現引張試験を実寸の4割に縮尺した試験片で行った。結論は以下の通りである。 ●平均板厚を基準とした腐食鋼板の引張り強度は平滑材に比べ約7%低下、破断伸びは平滑材の70%に低下した。 ●試験片全体から採取した部分模型試験結果は大きめの強度と伸びを与え、寸法効果があることがわかった。
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