研究概要 |
本研究の目的は,安価なPCクラスター並列計算環境におけるCFD,特にRANS法のコーディング技術の開発である.以前盛んに行われた計算コードのベクトル化の場合と異なり,並列計算の高効率化はコンパイラーオプションの発達だけでは達成できない.本研究では,特にRANS法およびその高度利用法,すなわち動的シミュレーションとRANS法応用船型自動最適化までを視野に入れた,コーディング技術の開発を目指す.研究の最終段階では64CPUクラスター環境においてもスケーラブル(scalable)であり,LINUX環境のメッセージ・パッシング・インターフェース(MPI)プロトコル対応の高効率コーディング技術を開発する. 本年度は最終年度であるので,一部システムの増強,そして研究の最終的な評価およびドキュメンテーションに重点を置いた.そのために,「MPIプロトコル対応非定常マルチブロックRANS法のコーディング技術の開発」の継続,大規模データ処理・解析のために「大容量・高速ディスクの増設」,および「最終的評価およびドキュメンテーション」を目標とした.具体的には,(1)MPIプロトコル対応非定常マルチブロックRANS法のコーディング技術の開発(継続):ここでは,前年度までに行ってきた本タスクを継続し,領域分割法を基礎とした並列計算処理技術のさらなる高効率化を目指した.前年度までに米国アルゴン国立研究所で開発されている並列計算対応・高効率楕円型偏微分方程式ソルバーの導入を完了していたため,本年度ではこれをより高度に利用し,MPIグループコミュニケーターを用いた多重RANS法実行アルゴリズムの確立と,その非勾配法型非線形計画法との結合による高効率船型最適化への応用を達成した.(2)大容量・高速ディスクの増設:本年度で行うシステムおよび並列計算コード群の評価を行うため,大量のデータを一括処理する目的で,クラスターネットワーク接続型の大容量・高速ディスクシステム(NAS)の導入を行った.そして,(3)最終的評価およびドキュメンテーション:本研究プロジェクト4年間の総括として,システムおよび並列計算コード群の最終的評価と報告書・論文の作成を進め,現在までに国際会議や国際学術誌で発表するための数編の論文を完成することができた.実際にはさらに多くの発表すべき成果を得ているため,ドキュメンテーションは今後も継続的する方針である.以上の成果をもって,本年度ならびに4年間の本研究プロジェクトの所期目的は全て達成できたと考える.
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