研究概要 |
メタンハイドレートは石油・天然ガスと異なり固体状で地下に存在するために,ハイドレート層からの経済的なガス採収法は確立していない。本研究では,室内実験を通じて堆積物中のハイドレートの分解過程をモデル化し,そのモデルを組み込んだ数値計算プログラムによるハイドレート層からのガス生産挙動の履歴予測を行うことにより,ハイドレート層からのガス採収法の評価を行った。さらに,適切なガス生産システムを見出すための計算に遺伝的アルゴリズムを利用した最適化手法の導入を試みた。本年度の研究では,以下の知見が得られた。 (1)ハイドレートの生成・分解に関する室内実験 堆積物中のハイドレートの生成・分解挙動を計測する実験装置を製作し,減圧法を適用したときのベレア砂岩コア内のCO2ハイドレートの分解挙動の特徴をコア両端圧力とコア表面温度の測定で把握した。 (2)モデル地層を想定した経済性評価 生産最適化の基礎研究として,メタンハイドレート生産シミュレータを用い,坑井配置,坑井仕上げ,地層熱物性を変化させてケーススタディを行い,各パラメータがガス生産に及ぼす影響について検討した。その結果,坑井タイプ(水平,垂直)水平坑井長さ,貯留層上下盤層の熱伝導率などが生産性およびガス生産プロジェクトの採算性に大きい影響を与えることがわかった。 (3)遺伝的アルゴリズムを用いた最適化計算 日本近海の海底下メタンハイドレートに熱水圧入法を適用した場合のガス生産履歴の計算結果(解析解)を用いて,プロジェクト現在価値を目的関数として,生産システム(熱水温度,熱水量,生産期間,水平坑井長さ)を最適化した。実フィールドのハイドレート賦存形態と資源量に関して利用できるデータが少なく簡略な地層モデルを使用したので,経済性評価の信頼度は低いが,ガス生産システムの最適化計算の指針を示すことができた。
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