研究概要 |
本研究は,ワイヤロープのインテリジェント化に関して,信号線として用いる電線(電纜)をロープ内にプローブ線として撚り込むことによって,ワイヤロープ自身に疲労や腐食による劣化の自己診断機能を付加することについて検討したものである。 1)導体素線径や被覆シースの材質が異なる8種類の電纜(外形約3mm)を製作し,その引張強度特性や曲げ疲労特性を把握する実験を行ったところ,電纜を構成する材料の適切な組み合わせによって,その強度特性と疲労特性をコントロールできることが明らかとなった。 2)また,それらの電纜を撚りこんだワイヤロープを製作し,引張試験とS字曲げ試験を実施したところ,電纜の導通状態によって,ロープの劣化進行をモニタリングできる可能性が示された。 3)引張疲労試験においても同様に,比較的簡単な計測装置によって電纜の電気抵抗変化を計測することで,ロープの劣化状態(残存寿命)の判定が可能となることが示された。 また,これらワイヤロープの劣化診断に関連して,特に最近問題となっている大型吊橋のハンガーロープの腐食劣化を評価する磁気検査システムに関する研究も行った。 4)ハンガーロープの腐食劣化をその全長にわたって診断する磁気検査装置(全磁束法)を開発し,実橋における試験を通じて,その実用性を確認した。 5)また,腐食状況を定量的に評価する方法を確立するとともに,実際の腐食が必ずしも長さに沿って均一的なものでないことを発見した。 6)さらに,最も腐食劣化の懸念が大きいハンガーロープ端末固定部について,それを検査するための磁歪型非接触超音波法を開発し,実況における試験を通じて,端末での反射減衰率をもとにして,劣化状態が判断できる可能性が示された。
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