研究概要 |
岩石の透水性は,空隙と亀裂に代表される微小構造と密接に関連する。そこで,本研究は透水性を正確に評価するために,各スケールでの空隙・亀裂の空間分布の特徴を定量化し,微小構造のスケール依存性,およびそれと岩石の透水係数との関係を明らかにすることを目的とする。今年度は異なったスケールでの空間分布推定に適した手法を見出すとともに,これとデータやバリオグラムのスケール則との組み合わせを考案した。以下に成果を要約する。 (1)粗い間隔のデータから細かい間隔での空間分布を推定する問題に対して,阿蘇カルデラのDEMデータを用いた。異なる6種類のデータ間隔のDEMを用いたところ,標高の頻度を表すヒストグラムとデータ分布に対するバリオグラムはスケールが異なっても類似しており,バリオグラムのパラメータもいずれもスケールとは線形的な関係にあることがわかった。これを用いれば任意のスケールでのバリオグラムが推定可能となる。地球統計学とニューラルネットワークに基づく5種類の空間分布推定法を検討したところ,simulated annealing (SA)の推定精度が最も高いことが明らかになった。他の手法では平滑化効果で推定値の範囲が実際よりも狭くなっている。 (2)スケール則を考慮した空間分布推定法の対象として,多孔質岩石の模擬モデルであるセメント気泡材に注目し,任意の大きさの領域における空隙分布推定を試みた。まず,(1)領域の大きさと空隙の最大半径γ_<max>との関係,(2)γ_<max>とバリオグラムとの関係,(3)空隙半径の積算確率分布,というスケール則を明らかにした。1×1cm^2,5×5cm^2,10×10cm^2,50×50cm^2,1×1m^2の5種類の計算領域を設定し,スケールとSAを用いたところ,いずれも妥当な空隙分布モデルが得られた。さらに,各モデルにおける最大連結距離に基づけば透水係数が推定できることが明らかになった。
|