研究概要 |
イネの節間伸長は、耐倒伏性や草型と関わる重要形質であり節間伸長の遺伝的制御により生産性の向上が期待される.本研究ではイネの稈(節間)の伸長性に関与する遺伝子変異に注目し、これらの遺伝子を単離同定し、その発現洋式を解明することによって育種への応用の可能性を検討することを目的として解析を進めた. ジベレリン(GA)生合成に関与するsd1は、穂形質に影響することなく節間を適度に矮化することで倒伏抵抗性の多収品種を実現したが、本研究ではsd1の機能解析をさらに進めるとともに最終年度に単離したGA生合成関連遺伝子d35とsd1の節間伸長に対する作用性を比較検討することによってsd1が何故優れた形質の付与に貢献したかを検討した.その結果、両者では節間伸長パターンの違いによることを明らかにした. 一方、これまでsd1以外にはイネ育種に応用された主要な矮化遺伝子は見当たらず、このような遺伝子資源の危弱性を克服するためにも、GAとは異なる制御に起因する遺伝子変異に注目する必要があった.そこで本研究ではブラシノステロイド(BR)の生合成・情報伝達に関わる変異体を同定しその作用性を検討した.BRの生合成及び情報伝達に関わる半矮性変異体の原因遺伝子(d2,d61)を単離し、これらの変異体遺伝子の節間伸長に対する作用性を検討した結果、BR関連遺伝子はGA関連遺伝子とは異なり直立葉の草型を示すとともに第2節間を非伸長にし、さらに相対的に下位節間の短縮をより顕著に示すことで倒伏抵抗性を高める実用形質として優れた効果を示すことを明らかにした.本研究を進める過程で得た成果をもとに、大麦の実用的半矮性遺伝子uzuがd61のオルソログであるという発見に貢献した.しかし、本研究で用いたBR変異体の解析からは穀粒に対する負の作用性が強く実用レベルでの効結果を得るまでには至らなかった.
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