研究概要 |
イネ品種銀坊主からガンマ線照射によって誘発された細粒突然変異系統IM294は,劣性突然変異slg(slender glume)の易変性によって,毎世代復帰型の非細粒個体および正常粒と細粒からなるキメラ個体を分離する.IM294と銀坊主のゲノムの比較分析から,slg座乗領域に位置するRurm1遺伝子に挿入されたMITE配列(mPing,当初Sairyuと呼んでいた)の切出しが復帰変異の原因であり,mPingはイネでは従来知られていなかった活性型トランスポゾンであることが強く示唆された.活性型トランスポゾンは,遺伝子解析や進化機構の解明を進める上で極めて有用であることから,本研究では,slg座とRurm1座の同座性の検証,mPingの切出し機構の解析およびIM294に見出される二次的突然変異の解析を計画した. 銀坊主とIM294の交雑F_2約4000個体を供試して,粒形とRurm1座のmPing挿入の有無との連鎖関係を解析した結果,Rurm1座からmPingが切出される際に変異配列が形成される場合のあること,またこれと関連してRurm1座の機能が失われた場合には例外なく細粒になることを明らかにした.また,IM294約5000個体についてRurm1座のmPing挿入の有無の調査を行い,切出し機構の解明の基礎情報となる切出し後に残される変異配列を多数同定するとともに,ゲノム内に散在するmPingの切出し頻度がその挿入位置によって異なることを明らかにした.これらの解析から,slg座とRurm1座は同座であると結論した.一方,mPingの転移を誘発する推定自律性因子Pingに関する解析から,その座乗位置およびコピー数に関して品種間多型性が存在すること,Pingに含まれるORFが全生育時期にわたって転写されていること,および,転写パターンはRurm1と極めて類似していることを明らかにした.
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