研究概要 |
イネ品種銀坊主からガンマ線照射によって誘発された細粒突然変異系統IM294の劣性突然変異(slg)形質は,易変性を示す.IM294と銀坊主のゲノムの比較分析の結果,slg座乗領域に位置するRurm1遺伝子に挿入されたMITE配列(mPing)の正確な切出しが易変性の生じる原因であり,mPingはイネでは従来知られていなかった活性型トランスポゾンであることが強く示唆された.昨年度までの本研究結果からslg座とRurm1座の同座性が検証され,通常の栽培下でmPingが活性化され転移することが明らかになった.さらに,品種においても通常の栽培条件下でmPingの転移が生じる場合があること,IM294は極めて高いmPing転移活性をもつことなどが明らかになった.本年度は,mPing転移に作用する推定トランスポゼース遺伝子を内在する自律性因子,PingおよびんPongに着目し,解析を行った. イネ品種系統におけるmPing, PingおよびPongの保有数や染色体座乗位置,それらが内在するORFおよびRurm1の転写に関する解析などから,イネゲノム内のPingの分布には多様な品種系統間変異が存在し,mPingのみならずPingの転移活性も認められること,また,それらの転移には,Pingが関与していること,Rurm1の機能喪失に大きく影響を受けること等が示された.また,Rurm1の組換えタンパク質を用いた解析から,RURM1タンパク質は,ユビキチンシステムと同様に,他の標的タンパク質と相互作用することによって機能することが確認された.その他,PingおよびPongの転移と放射線照射との関連についての解析結果が得られるなど,本研究で得られた知見から,活性型トランスポゾンの転移機構について,各種のストレス条件,あるいは,関連する遺伝子およびタンパク質相互の関連を含む基本的モデルが構築できた.
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