研究概要 |
本研究は水稲の器官形成に及ぼす大気CO_2濃度(以下,CO_2濃度)の影響を定量的に評価することを目的とする。本年度は,発育・形態形成に及ぼすCO_2濃度の影響の品種間差異に着目して,東北農業研究センターの温度勾配型CO_2制御装置(出入口気温差を約7℃に制御)にて次の2実験を行った。実験1では,坊主5号,新雪,きらら397(以上,北海道品種),あきたこまち,ササニシキ(以上,東北品種)の5品種を供試した。このうち,あきたこまちについては標準窒素区(0.3gN/株)に加えて高窒素区(1.0gN/株)も設けた。実験2では,あきたこまち,コシヒカリ,日本晴を供試し,5段階の温度処理を行った。なお,両実験ともCO_2濃度は外気と外気+200ppmvの2水準とした。<実験1>至穂日数に及ぼすCO_2濃度の影響は品種間で顕著に異なり,高CO_2濃度によって北海道品種の出穂は遅延したか変化しなかったのに対して,東北2品種では3〜4日早まった。また,最終葉数は,北海道品種では高CO_2濃度によって増加したか変化しなかったのに対して,東北品種では減少した。この傾向は主茎,分げつ茎ともに認められた。高窒素区における出穂日・葉数のCO_2濃度処理間差は標準窒素区に比べ小さかった。<実験2>至穂日数に及ぼすCO_2濃度の影響は,あきたこまちで大きく,コシヒカリでは認められなかった。すなわち,CO_2濃度に対する出穂反応の品種間差は単に早晩性の違いによるものではないことが示唆された。高CO_2濃度による発育促進作用は低温下でより顕著に現れた。以上から,CO_2濃度に対する発育反応は,品種,温度および窒素条件によって大きく変化することが明らかになった。
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