研究概要 |
本研究は,高濃度CO_2が水稲の発育,器官数,器官サイズに及ぼす影響を解明するとともに,高CO_2応答にいかなる遺伝的変異が認められるかを明らかにしようとするものである。本年度は,昨年度に引き続き,温度勾配型CO_2制御装置(グラディオトロン)にて器官レベルの発育,形態反応を調査するとともに,開放系大気CO_2増加(FACE)実験水田において,圃場条件における発育,器官形成の高CO_2応答を調査した。両実験も,坊主5号,きらら397(以上,北海道品種),あきたこまち,ササニシキ(以上,東北品種)の4品種を2水準のCO_2濃度(外気および外気+200μmol/mol)で栽培した。グラディオトロンにおける出穂,最終葉数,葉身長の高CO_2応答を昨年度の結果とあわせて解析したところ,いずれの年次も東北2品種の出穂期は高CO_2濃度によって早まったのに対し,北海道2品種では変化しないか遅くなる傾向が認められた。また,最終葉数および葉身長は東北品種では高CO_2濃度によって減少したのに対し,北海道品種では増加したか変化しなかった。さらにFACE実験水田における主稈葉数,葉身長のCO_2応答についてもグラディオトロンとほぼ同様の傾向が認められたことから,これらの品種間差異の再現性は高いものと考えられた。いずれの試験においても出葉速度および葉身長のCO_2応答性の違いは,最終3〜4葉(幼穂分化期頃以降)で顕著であったことから,一連の品種間差異は幼穂分化時期に及ぼす高CO_2濃度の影響に起因するものと推察された。すなわち,発育の遅速に関するCO_2と遺伝子型の相互作用は,出穂期のみならず,生産性に直結する葉数や葉身長のCO_2応答にも影響する可能性がある。
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