研究分担者 |
酒井 英光 独立行政法人農業環境技術研究所, 地球環境部, 主任研究官 (00354051)
岡田 益己 農業, 生物系特定産業技術研究機構・東北農業研究センター・地域基盤研究部, チーム長 (10355274)
実山 豊 北海道大学, 大学院・農業研究科, 助手 (90322841)
小林 和彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (10354044)
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研究概要 |
大気CO_2増加に対する作物成長の応答には,シンクサイズやシンク:ソース比が関連することが指摘されているが,その実験的検証は必ずしも十分ではない.イネのシンクサイズには一穂穎花数,穂数,籾サイズが影響する.これらのうち,どの形質が高CO_2応答に影響するかを明らかにすることは,高CO_2条件に適した品種特性を明らかにする上で重要である.そこで本研究では,シンクサイズに関わる形質のうち一穂穎花数に着目し,その遺伝的変異が生育の高CO_2応答に及ぼす影響を,開放系大気CO_2増加(FACE)と2種類のチャンバー(温度勾配型,屋外半閉鎖型)実験により調査した.供試品種は農林8号とその着粒突然変異系統のRM645(農業生物資源研究所放射線育種場育成),CO_2濃度は外気と外気+200ppmvの2水準とした.RM645は二次枝梗が極めて少なく,一穂穎花数は農林8号の約60%であった.高CO_2が一穂穎花数に及ぼす影響は小さかった.最上位展開葉の光合成関連形質(最大CO_2固定速度,Vc,max;最大電子伝達速度,Jmax)は,葉面積当たりの窒素含量(Narea)とともに低下した.ただし,RM645のNareaは出穂期以降農林8号に比べて高くなったのに対し,Vc,maxとJmaxには品種間差異は認められず,登熟期における窒素当たりVc, maxとJmaxはRM645の方が,特に高CO_2区で小さい傾向にあった.一方,高CO_2による地上部乾物重の増加割合は,6〜13%の狭い範囲にあり,有意な品種と処理の相互作用は認められなかった.以上の結果から,農林8号とRM645との間の一穂穎花数の遺伝的変異は,窒素当たりのVc, maxとJmaxといった光合成のCO_2応答に関与する特性値には影響したものの,乾物生産の高CO_2応答に及ぼす影響は大きくないことが,FACEと2つのチャンバー実験の結果から示された.
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