研究概要 |
日本では,米の過剰生産により水田の1/3が余っている状態で畑地への転換が望まれる一方,ダイズは製油などの需要も含めると優に90%以上をアメリカなどからの輸入に頼っており,アメリカを中心とする遺伝子組み替え作物の安全性の問題もあって自給率向上が期待されている.このため,水田をダイズ作に転換する試みが多く行われ,現在の日本のダイズ生産の多くは旧水田での生産が占めているが,排水の不良による生育障害や収量の低下がしばしば問題となっている.こうした問題を解決するためには,ダイズの根の過湿・湛水条件への反応を明らかにする必要があるが,そもそもダイズの根に関する基礎的データが不足している.本研究では,初年度の課題として,(1)各生育段階におけるダイズ根系の分布・生理的活性を明らかにする,(2)ダイズ根の過湿への応答を研究するための簡便な実験系を確立する,の2点に取り組んだ.(1)については,東京大学附属農場において圃場栽培したダイズ根系をモノリス法で観察するとともに,出液速度によって根系全体の生理的活性を評価した.その結果,土壌の表層部に形成される不定根が,特に生育の後半において重要であることが示唆され,降水量の多少に関わらず,中耕培土により不定根の発達を促すことが根の活性を高く維持し,茎葉部の生育や子実形成に有利に作用することを明らかにした.(2)については,スロバキアから招聘したA.Lux博士(コメニウス大学)の協力のもと,バーミキュライト培地で短期間に過湿障害を誘導したダイズを栽培するシステムを確立し,主に種子根の内部形態を観察して現在解析中である.
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