研究概要 |
前年度の研究成果を踏まえて、今年度はダイズ栽培における培土処理について、安定多収をあげるための栽培管理技術とともに、湿害の対策技術としての側面から検討を行なった。一般に培土処理を行なうと高い収量が得られるが、培土処理によって培土部分に不定根が多数形成されることで根長が増加するほか、登熟期を含みながら出液速度を指標としてみた根系全体の老化が緩やかに進行する可能性が高いことが明らかとなった。また、土壌表層における水分含量が生育期間を通して比較的高く保たれた結果として、培土部分において根の枝分かれが発達したことも関係していると考えられる。 つぎに、湛水処理によって人為的に過湿条件を作り出し,地上部の生育と収量、根系の分布および生理的活性に対する影響について検討を行なった。その結果、過湿条件下では、地上部乾物重や葉面積が抑制され、また葉色の退色も早く、これらの形質は湛水処理終了後も対照区に追いつかなかったが、培土処理によって被害を軽減させることができた。収量についても、同様の傾向が認められた。また、生育に伴う根系の生理的活性を出液速度を指標として検討した結果、湛水処理によって抑制されたが、処理終了後の回復はやはり培土区の方が早かった。このように、過湿害による被害は、培土処理によって軽減することができることが明らかとなった。培土処理によって不定根が多数形成され、根長が増加するとともに根系分布が浅くなっていたためと考えられる。
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