研究概要 |
ダイズに培土を施すと,培土部分に生理的活性が高い多数の不定根が形成されることや,それに伴って根系分布が浅くなることが15年度までに確認できた.そこで,この培土効果が湿害の軽減に役立つかどうかについて検討を進めた.すなわち,栄養生長期から開花期にかけての20日間,地表面まで湛水処理した過湿区と対照区とを設け,両区について培土処理が地上部や地下部の生育に与える影響について比較検討した.その結果,湛水処理開始時に十分展開していた主茎の第3節に着生した葉のSPAD値は,培土の有無に関わらず,過湿区で処理開始後2週間目あたりから低下が見られた.一方,湛水処理後に展開した第6葉のSPAD値は,過湿区と対照区のいずれにおいても,展開直後から培土処理によって高くなる傾向を示した.また,過湿区における出液速度や葉面積の推移は生育に伴う上昇が小さく,湛水処理終了直後は対照区に比べて非常に小さかったが,処理後の回復は培土を行った方が良好であった.そこで,湛水処理終了直後に根系分布を調べたところ,過湿区では土壌表面から10〜20cmの深さに分布している根が少なく,全体として分布が浅かった.さらに,培土を行うと,培土部分で不定根が非常によく発達し,全根長の半分以上が分布したことから,予想どおりの浅い根系分布を作り出すことができていることが確認できた.湛水処理終了後の地上部乾物重の回復程度は培土を行った方が良好であり,最終的に収量の減少程度は培土をした方が小さく抑えられていた.以上のように,培土処理をしても,湛水処理によって根系の生理的活性や地上部の生育の抑制は免れなかったが,不定根の発達が著しく促されたことで,ストレス後の生育の回復に対して有利に働き,被害の軽減につながることが示唆された.
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