研究概要 |
クロタラリアに関するこれまでの研究成果を生産現場へ展開する基盤を確立するために,塩類集積土壌から有機物として回収した養分の畦外圃場における肥料分としての利用の可能性と,すき込み後の腐熟期間における他感物質等の生成による雑草防除の可能性について,それぞれ明らかにすることを目的とした.2年目にあたる15年度の研究実績の概要は下記の通りである.前年度の試験において,すき込み資材として特徴的な様相を呈することが示されたC.incanaとC.pallidaについて,すき込み後の腐熟期間が後作に及ぼす影響を検討した.両種の地上部を300ml容ポットに生体重で約20gを混合した区と窒素施用(0.03Ng/ポット)区とを設け,試料すき込み後10日目と30日目の2回に分けてコムギ(農林61号)を播種し網室で栽培した.すき込み試料のリグニン含有量はC.pallidaでやや低く,C-N比とL-N比は両種間で差異はなかった.しかし,両播種日においてコムギの乾物重,窒素含有量は,C.pallida区で低く,両種の差異は10日目播種区で大きかった.また,C.pallida区では,播種後15日目の土壌には無機態窒素が多く,コムギのすき込み試料から供給された窒素の回収率は小さかった.C. pallidaのすき込みによって生育抑制物質が生成された可能性が示唆された.さらに,両種の葉・茎別の粉砕試料を作成し,それぞれ5gずつを土壌15gとよく混合し,不織布袋につめて圃場に埋設し,両種の分解と窒素の無機化について評価した.葉の炭素残存率の減少は両種ともに著しくその程度はC. incanaで大きいこと,窒素残存率の減少は埋設後15日目からC.incanaで著しいこと,茎の窒素残存率と炭素残存率の減少に両種間で大きな差異はみられずその程度は埋設初期に大きいこと,などが明らかになった.
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