研究概要 |
熱帯原産のマメ科緑肥植物を集約的作物生産が余儀なくされる農耕地へより効果的に導入するための基盤として,クロタラリア属植物とセスバニア属植物の生育ならびに養分吸収特性を明らかにし,あわせてすき込み後の窒素とリンの動態と雑草抑制効果について4年間にわたり解析を進めた.最終年にあたる17年度の研究実績の概要は下記の通りである.C.spectabilisおよびS.rostrataの緑肥利用特性を,特に地下部残存窒素の機能に着目して調査した.1/2000aワグネルポットに赤玉土を充填して,両作物を栽培し,9月中旬と下旬にそれぞれ刈取り,地下部のみをすき込む区(R区)と地上部と地下部をともにすき込む区(S+R区)を設けた.すき込み後15日目と30日目にコマツナを播種し,地下部に蓄積する窒素の後作物への貢献度について評価を試みた.緑肥植物の乾物重と全窒素含有量はS.rostrataで高い値を示した.播種後20日目から調査したコマツナの最大葉の葉長と葉幅は,両植物区ともにR区で有意に優ったが,収穫時の乾物重と全窒素含有量はS+R区で有意に優った.すき込み資材の全窒素含有量に対するコマツナの全窒素含有量の割合は,いずれの植物区でもR区がS+R区に比べて高く,前年度にC.brevifloraで示した結果と同様に,両植物においても地下部に蓄積された窒素の後作物への貢献度が必ずしも小さくないことが示唆された.すき込み後に経時的に調査した土壌溶液の無機態窒素含有量は,両植物ともにS+R区で高かったが,S.rostrataのR区はC.spectabilisのS+R区よりも高く,刈取り直後から根系より放出される無機態窒素の機能について検討する必要が示された.すき込み資材の水抽出物を濾過滅菌した後に,無菌的に播種したレタスに施用したところ,両植物ともに葉の抽出物で生育阻害が強く認められた.
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