研究概要 |
熱帯原産のマメ科緑肥作物を集約的作物生産が余儀なくされる農耕地へより効果的に導入するための基盤的知見を得ることを目的に研究を進めた.クロタラリア属植物数種を供試し,各種の生育特性を評価し,あわせて,それらを緑肥としてすき込んだ場合に問題となるすき込み直後の生育抑制現象や地下部に蓄積する残存窒素の後作への効果について量的に明らかにした.1年目には,C. incana, C. pallidaの2種を供試して,その生育特性を明らかにした.C. pallidaは主茎の伸長と茎径の増加が,C. incanaは分枝の発達がそれぞれ著しかった.2年目には,両種についてすき込み後の腐熟期間が後作コムギの生長と窒素吸収に及ぼす影響を検討した。C. pallida区では,すき込み後の土壌には無機態窒素が多かったが,後作によるすき込み試料から供給された窒素の回収率は小さく,すき込みによって生育抑制物質が生成された可能性が示唆された.3年目には,九州,四国地域でセンチュウ対抗植物として導入が試みられているC. brevifloraに着目して,その緑肥利用特性を調査した.すき込み後に生育させたコムギの全窒素含有量に占めるすき込み地上部由来窒素の割合は68%,窒素固定由来の窒素の割合は32%であった.一方,地下部すき込み区におけるコムギの全窒素含有量は地上部すき込み区の54%になり,本種の地下部に蓄積された窒素の後作への貢献度が高いことが示唆された.最終年には,C. spectabilisおよびS. rostrataの緑肥利用特性を,特に地下部残存窒素の機能に着目して調査した.C. brevifloraと同様に,両植物においても地下部に蓄積された窒素の後作物への貢献度が必ずしも小さくないことが示唆された.地上部刈取り直後から根系より放出される無機態窒素の機能について窒素飢餓の軽減の視点から検討する必要が示された.
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