研究概要 |
低温保存中に小花の黄化が起こり、品質が低下するブロッコリーを用いて,弱光照射の影響を検討した。その結果、保冷庫(5℃)に入庫し21日間250lxの弱光を照射した花らいは光を照射しなかった暗黒区のそれに比べて、小花の退色が少なく,食味,香りも良好であったが、重量の減少が大きかった。 そこで、この重量減少の要因を、気孔の形態調査、表面温度、O_2放出量の変化などから検討した。その結果、気孔開度に相違はないが、光照射した花らい表面の温度が1〜2℃高いために蒸散量が多くなること、また、光合成による水の分解が体内水分の損失と関係していると考えられた。なお、花らいをポリエチレン(水分が袋の外に出る)袋とMA(水分が袋の外にでない)袋に入れて比較したところ、入庫25日後におけるMA袋区の花らいの重量減少はポリエチレン袋区のそれに比べて著しく小さく(3%程度)、また、小花のがくの緑色の退化程度も小さかった。よって、弱光照射した花らいの水分損失はMA包装によって抑えることができた。 次に、小花のがくの緑色の退化が小さくなった要因を、クロロフィール含量、酸素電極法による光飽和条件下のO_2放出速度からみた光合成速度、小花の糖含量などから検討した。その結果、入庫後10日目における光照射した花らいのクロロフィール含量は入庫時よりも多く、また、暗黒で保存した花らいのそれに比べて著しく多かったことから、葉緑体の生成が行われていることがわかった。また、光飽和条件下のO_2放出速度が高いことから、生成された葉緑体の生理活性は高かいこと示された。さらに、照射区の花らいはO_2消費量およびCO_2排出量が少ないことから光合成を行っていることが認められたが、照射している光の量は少ないことから、光合成による同化産物の生成量は極めて少ないと推察された。一方、照射区の花らいの糖含量は入庫後に少なくなったので、葉緑体の生成に使用されるエネルギーは主に体内の糖の分解によるのものと考えられるが、このことについてはさらに詳細に検討する必要がある。
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