リンゴの自家不和合性と単為結果性関連遺伝子群、バラの花器官分化と棘形成に関わる遺伝子群の解析を行い、以下の成果を上げた。 1.リンゴ自家不和合性については、(1)リンゴ栽培種'旭'のS10-、S25-RNase遺伝子群の構造を明らかにし、PCR-RFLP解析法によるS10-、S25-allele同定法を確立した。(2)日本と西欧のS-alleleの対応関係を明らかにし、S遺伝子型表記を世界的に数字表記に統一することとした。(3)国内のS遺伝子型未同定栽培種を中心に80種のS遺伝子型を解析し、63種のS遺伝子型を同定した。 2.リンゴ単為結果性については、(4)リンゴ栽培種'印度'から単為結果性関連遺伝子群と思われるMdiPI、MdTM6、MdiMADS13を単離し、構造及び発現解析を行った。(5)単為結果性リンゴ作出用遺伝子導入ベクターを構築した。 3.バラ花器官分化については、(6)野生バラ(Rosa rugosa 和名ハマナス)から単離した花弁と雄しべの分化制御に関わるMADS遺伝子群(MASAKO BP、B3、euB3)のゲノム解析を行い、ハマナスとグリーンローズ(花弁、雄しべ、雌しべがいずれも萼化する変異体)における発現解析を行った。また、MASAKO BPについてはin planta形質転換法によりシロイヌナズナに導入した。(7)ハマナスから単離した雄しべと雌しべの分化制御に関わるMADS遺伝子群(MASAKO C1-C6、D1)をシロイヌナズナに導入し、花器官のホメオティック変異について解析した。(8)ハマナスから花弁、雄しべ、雌しべの分化制御に関わると思われるSEPALATA3(SEP3)ホモログ遺伝子を単離し、構造を明らかにした。 4.バラの刺形成については、(9)SEP3ホモログ遺伝子とMASAKO遺伝子導入による棘の花弁化に向けてバラへの遺伝子導入系の検討を行った。(10)ハマナスと棘のない野生バラ(Rasa multiflora)を交配し種子を得ることに成功した。
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