研究概要 |
エチレンはガス状の植物ホルモンであり、高等植物の一生を通じて様々な成長段階で重要な働きをしている。エチレン生合成経路においてACC合成酵素(ACS)は律速段階を触媒する酵素であり、エチレン生合成の中で、最も重要な酵素である。我々はACSがリン酸化されることを初めて示し、そのリン酸化部位を明らかにした。このリン酸化による制御機構は、細胞内のACSの量を調節するものであり、その分子機構を明らかにするが本研究課題の目的である。そこでリン酸化による翻訳後制御機構を解明するために、トマトACS,LE-ACS2,をリン酸化するprotein kinaseの同定を試みた結果、CDPKがクローニングされLeCDPK2と名付けた。LeCDPK2はLE-ACS2以外のACSアイソザイムもリン酸化することができた。シロイヌナズナにはゲノム中に34個のCDPKが存在しているので、トマトにおいてもそれ以上のアイソザイムの存在が予想できる。既にLeCDPK1とLeCPK1のクローニングが報告されているので、これらもクローニングしてそれぞれを大腸菌で発現させ、生化学的特徴を調べた。その結果、3つのCDPKとも生化学的に大きな違いはなかった。このことはどのCDPKが真のACS-kinaseか一義的に特定することが困難であることを意味している。一方、ACSに結合しその半減期を制御している新奇タンパク質EOLのホモログの同定も試みた。その結果、4種類のLeEOLを同定し、その中、3つについては完全長cDNAのクローニングに成功した。いずれもN末端領域にBTB/POZドメインを、C末端領域に3から5つのTPRドメインを持っており、タンパク質複合体の形成に関与することが示唆された。今後はEOLとACSの結合およびリン酸化による影響を調べる必要がある。
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